「永遠の女王曽我町子さん」

デジフロイド代表 中潟憲雄


曽我さんとの出会い、それは全くの偶然でした。
デジフロイド開発部の筋向かいにある瀟洒な建物、4年前、アンティークなそのお店に何の気なしに立ち寄った私は思わず仰け反ってしまいました。そこに居らしたのは、あの曽我町子さんその人だったのです。(表にあった Machiko Soga Collection を見逃していました)チロリン村のつぼみのリップちゃんに始まり、元祖オバQ、カッパの三平の妖怪死なず娘、レインボーマンのゴッドイグアナ等々、瞬間曽我さんが今まで演じられた役の数々が走馬燈のように頭を巡り、その突然の出来事に軽い目眩を覚えました。歓談の後、へドリアン女王の香水を買って帰ったその日から、私は女王様の忠実な僕となったのです。そしていずれ何らかの形でご一緒に仕事がしたい、畏れ多くもそんな事を考えるようになっていたのです。


2度目にお会いした時も衝撃でした。
久々にお店に立ち寄ると「今知り合いが来てんのよ、ちょっと待っててね」と曽我さん。奥には眼鏡をかけた恰幅の良い壮年の紳士が・・・ん?どこかで見たことがあるそのお顔。お付きの方に恐る恐る訪ねてみました「あの方はもしかして平山さんでは?」「そうですが何か?」。その後、最敬礼で自己紹介をし、サインを頂き握手させていただいのは言うまでもありません。そのお方こそは、仮面の忍者赤影、カッパの三平(好きなんです)、仮面ライダー、キカイダー、ゴレンジャー等々、きら星のごとき東映特撮TV番組の数多くを手がけられた名プロデューサー平山亨氏その人だったのです。親しげにお二人で何をその時お話されていたのか、今となっては知る由もありませんが、曽我さんの交遊の深さに恐れ入った次第です。

3度目にお会いした時、こちらはすでに宇宙刑事魂のオリジナルシナリオをほぼ完成させており、手短にプロットをご説明すると、まだキャラクターデザインが決まっていないにもかかわらず、曽我さんは大乗り気で暗黒銀河女王役を快諾されました。さらにオバQ音頭で盆踊りしたことがある私は悪ノリし、挿入歌「暗黒銀河女王のブルース」を歌って頂く約束まで取り付けたのです。その後、野口竜先生に女王の素晴らしいデザインをいただき、それを見ながらお顔の部分は曽我さん自らがメイクを指定して暗黒銀河女王は完成したのです。
CGで顔の表情を作るための素材として、写真スタジオで曽我さんのお顔を撮らせていただいた時のことは忘れられません。阿修羅のごとき憤怒の形相、少女のような可 憐な微笑み、憂いを帯びた悲しい横顔、天に響き渡る高笑い、フラッシュが焚かれる ごとに刻々と変えてゆくその表情、脇で見ていて役者としての曽我さんの演技力に完 全に打ちのめされました。
そして迎えたセリフの収録と歌のレコーディング。
すでに暗黒銀河女王になりきっていた曽我さんは、私ごときがディレクションをするまでもなく、スタジオに入るや台本には無かったセリフや歌詞までもアドリブで語り歌い、そのテンションたるやスタジオのマイクのゲインを振り切るほどの想像を絶する凄まじいものでした。お陰さまでデジフロイド初のオリジナルキャラクターは、宇宙刑事たちと対峙出来うるだけの素晴らしいものとなりました。ただし歌の方は、ご本人的にはスケジュールの関係で事前の歌い込みがあまり出来ずに心残りがあったようです。
そこで今回のゲームミュージックCDの話がまとまり、曽我さんは大いに喜んでおられ「今度はキメるわよ〜ん!」と今まで以上に張り切っていたのでした。
お亡くなりになる4日前、電話でレコーディングのスケジュールをお伝えすると、やる気満々で「先に充分歌い込みをしておきたいので、デモテープができたら直ぐにお店に持ってきてね」と言われたのが最後になりました。まさに晴天の霹靂でした。

病魔との苦しみを一切表には出さず、亡くなる直前まで役者としての本分を全うした曽我さんに深く敬意を表するとともに、短いあいだでしたが曽我さんと一緒にお仕事が出来たことを誇りに思います。本当に有り難うございました。

私は未だに曽我さんが亡くなった事が信じられません。今後も信じないことにしています。人間の姿を借りた大宇宙の魔女であり女王様が、死ぬなどということはあり得ないのです。またいつの日にか我々の前に光臨し、あの地の底から響き渡るような高笑いを聴かせてくれるに違いないと確信しているからです。



 
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